夫婦間の贈与に関する注意点
結婚し、パートナーや子ども、お互いの両親など家族との将来を豊かに過ごすために「これから投資をはじめよう!」という方が知っておくべき夫婦間の贈与について、注意すべきポイントをまとめました。
そもそも贈与税って何? 投資に関係あるの?
“贈与税は個人からの贈与によって財産を取得した場合に、その取得した財産に課税される税金です。”(出典:国税庁ホームページ)
・・・具体的にはどういうこと???
個人からのお金の受け渡しについて、法律で定められた条件のもとで課税される税金のことです。 “個人”というのが注意ポイントで、いくらを交わしたりしないので、ある意味気軽に受け渡し(贈与)できてしまい「贈与税がかかるものだとは知らなかった!」ということになりかねません。
例えば、「将来の家族の豊かさのために」と夫の名義で口座開設して投資をスタートするとします。家族のためですから夫婦お互いの稼ぎから元金を出し合おうとなるのも自然ですよね。この際に、妻がいくら夫名義の口座にお金を移動するかがキーとなるのです。
では、どんな場合に贈与税がかかるのか詳しく見ていきましょう。
基礎控除の110万円を超える贈与には贈与税がかかる
贈与税の基礎控除額は年間110万円なので、個人から110万円以上をもらった場合に、110万円を超える金額が課税の対象となるため、申告が必要です。申告および納税の義務があるのはもらった側です。税率は基礎控除後の課税価格により異なります。
例えば、夫名義の口座に投資の元金を夫婦お互いに150万円ずつ、合計300万円でスタートしようとした場合、夫は妻から150万円“もらった”ことになるので、40万円が課税対象となります。夫は、この贈与が行われた翌年の2月1日から3月15日までに申告および納税を実施する必要があります。これは現金で受け渡しをしたとしても同様です。
「それなら基礎控除額を超えないようにすればいいか」と思うかもしれません。しかし、将来的にある程度大きな額の財産を築くつもりで投資を始めようと情報収集されているはずですので、贈与税がかからない、または、控除されるケースも次にご説明します。
住宅の贈与は夫婦間贈与の特例に当てはまる場合がある
夫婦間贈与の特例の場合2000万円の税金控除額が適用されます。
結婚してから20年を過ぎている夫婦間であれば、自分が住むための住宅または自分が住む住宅を購入するための資金の贈与は、基礎控除とは別に最高2000万円まで控除されます。
例えば、投資で得た利益を使ってセカンドライフのための不動産や土地の購入を考えている場合、夫名義の口座で管理している利益であっても、2110万円までは妻が非課税で贈与を受けて住宅資金として使用し住宅購入することができるのです。
ただし、夫婦間贈与の特例が適用される場合でも、不動産取得税はかかります。居住用中古住宅やその敷地に対して一定の条件で軽減措置が施されているので、場合によっては課税額が少額で済むこともあります。
不動産関連での贈与としては、他にも以下のようなケースがあります。
• 住宅ローン
契約の名義人が夫で、返済を妻が行っている場合、そのローン返済額は妻から夫への贈与となり、基礎控除額を超える金額に対して課税されます。
• リフォーム
不動産契約の名義人が夫で、リフォーム費用を支払うのが妻である場合、そのリフォーム費用は妻から夫への贈与となり、基礎控除額を超える金額に対して課税されます。もし夫婦共有名義の契約書であっても、どちらか一方がリフォーム費用を支払う場合は贈与とみなされ、基礎控除額を超える金額に対して課税されます。
生活費としての資金であれば贈与とはみなされない
贈与税の基礎控除は年間110万円なので、毎月で考えると約9万円です。生活費や教育費を夫婦間で出し合っても年間110万円なんてすぐ超えてしまいますよね。夫婦には配偶者への扶養義務がありますので、生活に必要な費用は贈与とはみなされないのです。
生活水準はさまざまですので「何を基準に・・・」というのは難しいところですが、高額でも生活費の一部として認められるものとしては、自家用車や結婚式の費用などです。
普段使いしない高級車や高価な宝石など財産価値のあるいわゆる贅沢品を夫または妻へのプレゼントとした場合、贈与とみなされる可能性があります。
生活費としてもらったお金を「将来の生活費をつくるため」と投資元金に回すのは厳禁です。(生活費として認められません。)また、老後の生活費ともなる年金についても、個人年金保険で夫が保険料を負担していた場合、受取人が妻であれば贈与とみなされ課税対象となります。
夫婦間贈与の未申告はばれる?
税務署は毎年税務調査を行っていますから、当然ばれます。もっともばれやすいのは不動産登記をするときや相続のときです。
不動産登記では、不動産を購入した人がどのようにその費用を捻出したのか、根拠があるかなどを確認します。何か違和感があれば、夫婦間贈与が行われたのではないかと疑われてしまいます。
相続についても、相続税を正しく算出するために、それまでの財産の流れなどを綿密に確認するので、ここでも違和感があれば夫婦間贈与を疑われます。
婚姻期間中であればいつでも夫婦間の贈与は取り消しが可能ですが、その分移動させたお金はもとに戻すことになります。
未申告がばれると本来の贈与税に延滞税と加算税が上乗せされてしまうので、夫婦間であってもお金を動かす際には軽く考えず、将来設計を相談しながら進めていきましょう。
ちなみに、アメリカでは夫婦間で贈与を受ける側がアメリカ人であれば、その贈与額がいくらであっても非課税となります。今回のお話は日本の法律の中での注意点なので、それも踏まえてあなたにとって何が適切か考えてみてください。